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アメリカにおけるオーガニック(有機栽培)の定義とは?

12/29/2015

アメリカで「オーガニック」商品として
販売するには?

野菜などの食品はもちろん、オーガニックコットン、オーガニックコスメ、さらにはオーガニックのおむつまで、「むしろオーガニックじゃないモノってあるんですか?」というくらいさまざまな製品が「オーガニック」なアメリカ西海岸。「毎日少しずつでも化学物質を摂取することが体にいいはずはない」という考えがすごく一般に浸透しているんです。この「オーガニック」を認定しているのがUSDA(United States Department of Agriculture)=米国農務省の一機関であるNOP(National Organic Program)なのですが、この機関が「オーガニック」と認定するための規定は非常に厳しいです。同機関が定義する「オーガニック」とは、「認可された方法のみによって生産された食品もしくはその他農作物を指す表示用の言葉。この認可された方法とは、資源の循環や環境のバランス向上を促し、生物学的多様性を守る文化的、生物学的、そして機械的な農法を統合的に行うものである。合成肥料や汚泥再生肥料の使用、放射線照射、遺伝子組み換えがなされたものはオーガニックと認められない」とされています。

 

オーガニックな農作物の作り方、
畜産物の育て方

もう少し具体的に掘り下げてみると…

【オーガニックと認められる農作物の作り方】
◉オーガニック作物を収穫する前の3年以内に禁止物質を使用してはならない。

◉土地の肥沃度と農作物の栄養状態は、
①耕作地と耕作方法
②輪作
③動物および農作物廃棄物、認可された合成物質で栄養補填された冬期の土質を保つための被覆作物によって管理されていること。

◉害虫、雑草、病害は、主に物理的、機械的、生物学的な方法を用いて管理する。これらだけでは不十分な時のみ、認可されている生物的・植物的物質、もしくは合成物質を使用してもよい。

◉入手可能な場合は、オーガニックの種や苗木を使用しなければならない。

◉遺伝子組み換えや電離放射、汚泥再生肥料の使用は禁止する。

 

【オーガニックと認められる畜産物の育て方】
◉食肉用の動物は、3世代前から(鶏の場合は、生後2日目以内から)、オーガニック的な管理下で育てられなければならない。

◉家畜に与える飼料は100%オーガニックの農作物でなければならない。ただし、認可されたビタミンやミネラルなどの栄養補助製品は与えてもよい。

◉オーガニックな乳製品として販売・表記するには、少なくとも12カ月以上、オーガニックな管理下で乳製品用の家畜を飼育しなければならない。

◉家畜の健康維持のために病気の予防は必要である。病気や怪我をした家畜の治療を差し控えることはできないかもしれないが、禁止物質を使用して治療を受けた家畜はオーガニックとして販売することができない場合がある。

◉反すう動物は、全放牧シーズンを通して120日以上、牧草地に放たなければならない。飼料、乾物摂取量の30%以上は牧草地から取ったものでなければならない。

◉オーガニックな家畜は全て、1年を通して屋内外の出入りが可能でなければならない。文書化された環境、健康上の問題がある場合のみ、一時的に監禁することが認められる。

◉オーガニックな家畜には、どのような場合においても、成長の促進を目的としたホルモン剤や抗生物質を与えてはならない。

…などなど、非常にそのルールは厳しいです。

 

アメリカのオーガニック表記には種類がある

ちなみに、オーガニックの表記には以下の3種類があります。
100%Organic:100%オーガニック原料の製品
Organic:95%以上オーガニック原料の製品
Made with Organic ingredients:70%以上オーガニック原料の製品
以上のうち、USDA のオーガニックマークを使用していいのは①と②だけ。これらの細かい規定を全て守るため、多くの農家をはじめ多くの関係者が血の滲むような努力をしているわけです。それでいて、こちらのオーガニック製品は非オーガニック製品と比べてもそこまで高価なわけではなく、しかもWhole Foods MarketやSprouts Farmers Market、Trader Joe’sなどのスーパーやオーガニック農家の直売所などで簡単に手に入るのですから、ありがたい話です。

ちなみに、日本国内において「オーガニック」や「有機」と商品に表示するためには、農林水産省が定める「有機JAS認定」を取得する必要があります。ただ、日本ではまだまだオーガニック製品が社会に浸透しているとは言いがたく、値段も高価なため、毎日の生活に気軽に取り入れるという段階にはきていませんね。でも、例えば「コットン製品はオーガニックにしてみる」とか「生で食べる野菜はオーガニックにしてみる」など、少しずつでも西海岸のオーガニック・ライフを取り入れて、暮らしを「オーガニック」にしていってはどうでしょうか?

 

◉引用元:

  • LABELING ORGANIC PRODUCTS」(USDA)
  • Organic Production and Handling Standards」(USDA)
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    Totti

    LA在住歴10年超のアラフォー日本男児。日本では書籍や雑誌、Webメディアの編集および執筆、広告制作などに従事。現在はフリーランスの編集者&ライター。

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