お役立ちコラム

オーガニック・コットンを選ぶということ

05/08/2016

コットンというと
何を思い浮かべますか?

気持ちいい?
柔らかい?
体に優しい?
環境にやさしい?

コットン(=綿)といえば植物繊維だし、「体にも環境にもやさしい」というイメージを持っている人が多いのではないでしょうか?ところが、実はコットンって数ある農作物の中でも特に農薬・化学肥料を大量に使って生産されている植物なんです。世界中の農地の中で、コットンを生産しているのは全体の約2.5%。にもかかわらず、使われる農薬(化学肥料、防カビ剤、殺菌剤、除草剤、殺虫剤、落葉剤など)の使用量は全体の6.8%にもおよぶとか。さらに、殺虫剤に至っては全体の15.7%を占めるというから驚き!(参照元:『オーガニックコットンについて』 日本オーガニック・コットン協会)

コットンの生産が影響を与えるのは、農地や農家の人々だけではありません。例えば、農薬や化学肥料は、それらを生産・輸送することでたくさんのCO2を排出します。また、農薬によっては、使用することでさらにCO2を排出するものもあります。農薬や化学肥料をたくさん使うコットンの生産は、環境への影響も非常に大きいのです。

 

オーガニック・コットンとは?

農薬や化学肥料を3年以上使っていない土壌で、
農薬や化学肥料を使わずに栽培されたコットンのこと

そんな背景から、オーガニック・コットンを作る農家が徐々に増えてきています。ただ、オーガニック・コットンを育てるのは大変。まず、オーガニック・コットンを育てる際は殺虫剤や除草剤を使わないので、例えば雑草が生えたら手や耕運機で除去しなければいけません。また、化学肥料の代わりに牛糞や堆肥などの有機質肥料を使うのですが、有機質肥料が肥料として使えるようになるまでには厳密な管理が必要。さらに実際に使用する際も、植物が吸収できるのは有機質肥料が土の中で微生物に無機化されてからなので、肥料としての効果が出るまでの時間が化学肥料よりも長くかかります。さらにさらに、収穫時に農薬で綿花を落とすことはせず、自然に落ちるまで待たなければなりません。つまり、通常のコットンに比べ、オーガニック・コットンの生産はとてもとても手間がかかるわけです。

現在、世界のコットン生産量のうちオーガニック・コットンはわずか0.7%に過ぎません(参照元:『Organic Cotton Facts』 Organic Trade Association)。そして、実はオーガニックとそうでないコットンとでは、収穫物の品質自体にはほとんど違いがないと言います。また、通常のコットンでも農薬の残量はかなり少ないため、農薬の検出量からオーガニック・コットンかどうかを判定することも困難。そこで、消費者である私たちが、本物のオーガニック・コットン製品を見分けるのに、オーガニック認証マークの有無が役立ちます。

 

コットンにもあった!オーガニック認証

Global Organic Textile Standardオーガニック・コットンの認証は、コットンの生産過程に対するものと、製品の製造過程に対するものの2種類に分かれます。

コットンの生産過程に対しては、ヨーロッパでは「ECC規制2092/91」、アメリカではUSDAによる「USDA/NOP(米国農水省/自然有機プログラム)」が主な世界基準。製品製造過程に対しては、「GOTS(Global Organic Textile Standard)」が世界基準として認められていて、
・Organic:製品の95%以上がオーガニック繊維から成る
・Made with Organic:製品の70%以上がオーガニック繊維から成る
の2種類のラベルを発行しています。

 

プレ・オーガニック・コットンとは?

前述したとおり、オーガニック・コットンとして認められるには、農薬や化学肥料を3年以上使っていない農地で栽培しなければなりません。この3年間の移行期間に栽培されるコットンは「プレ・オーガニック・コットン」と呼ばれます。

今まで通常の農法でコットンを栽培していた農家がオーガニック農法に切り替えると、農薬や化学肥料を使わないことでコットン収穫量が20〜30%減少します。一方、収穫したコットンはまだオーガニック・コットンとは認められないため、取引額はそのまま。また、そもそもオーガニック農法の知識が十分でない場合も多く、農家は大変な苦労をします。

そこで、このようなプレ・オーガニック・コットン農家を支援する動きが高まっています。例えば、ロサンゼルス発祥のファッションブランド「9PLANET UNIVERSE」は、プレ・オーガニック・コットンを使ったTシャツなどを積極的に生産・販売しています。
また、日本の「プレ・オーガニック・コットン・プログラム(POCP)」は、インドのコットン農家がオーガニック・コットンに移行するのを支援しています。
※インドはコットン生産量世界第2位(参照元:『Leading cotton producing countries worldwide in 2014/2015』 statista)

▼ POCPの支援内容
・オーガニック栽培支援費を乗せた額で購入する
・オーガニック農法を指導する
・オーガニック認証の取得支援をする
・収穫時の購入保証をする
など。

インドのコットン農家のオーガニック・コットン移行を支援する「プレ・オーガニック・コットン・プログラム」(photo: http://www.preorganic.com/)

インドのコットン農家のオーガニック・コットン移行を支援する「プレ・オーガニック・コットン・プログラム」(photo: http://www.preorganic.com/

日本のファッションブランド、Urban ResearchやUnited Arrows Green Label Relaxing、SHIPS、セオリーをはじめ、LeeやJurlique、LeSportsacのような海外のメーカーもPOCPに参画していて、さまざまなプレ・オーガニック・コットン製品が誕生しています。
ちなみにPOCPは、kurkku/クルック(音楽プロデューサー、小林武史氏が代表を務める)と伊藤忠商事が共同で企画・運営をしています。

 

オーガニック・コットンを選ぶことは
未来の地球に投資すること

オーガニック・コットンを選ぶメリットは、使用・着用する人の安全性のためというよりも、農家の人たちの安全性や、生産過程・製品製造過程における環境保護にあると言えます。環境保護は巡り巡って私たち消費者の健康や安全性に還ってくることになる訳ですが、この間接的で長期的な循環のために、多少高価(通常のコットン製品に比べ)なオーガニック・コットン製品を私たちは進んで選べるでしょうか?

新しくコットン製品を買う時には、オーガニック・コットンやプレ・オーガニック・コットンを選ぶ。でも、過去に購入したコットン製品も大事に使う(使用する過程での環境への影響は、通常のコットンもオーガニック・コットンも変わりがない)。というのがまず最初に私たちにできることだと思います。ものは必要以上には生産しない。生産するなら、できる限り環境に配慮した生産方法で、というのが大切です。

ちなみに、環境保護に熱心なメーカーとして有名なアウトドアブランド「Patagonia/パタゴニア」(カリフォルニア州)は、1996年以降全てのコットン製品をオーガニック・コットン100%にしています。同社は他にもさまざまな環境保護活動を行っていることで有名です。パタゴニア以外にも、最近は環境保護への取り組みなどに熱心な"エシカル(ethical=道徳観、倫理観ある)"なメーカーやブランドは多いので、また別の機会にご紹介しますね。

 

 

◉参照元:

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MAY

東京でWebマーケティング・ECコンサルに従事した後、2011年に長年の夢であった海外生活をすべくロサンゼルスに移住。現在はフリーランスとして旅をしながら様々なWebプロジェクトやアテンド案件に参画。
趣味:街散策(#しべさんぽ)、ロードトリップ、キャンプ、国立公園巡り、イベント巡り(特にフェスと映画祭)、西海岸メイドの素敵なブランドを発掘すること。

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