キリスト教の布教とゴールドラッシュで
広まったカリフォルニアワイン
カリフォルニア州、オレゴン州、ワシントン州を擁するカリフォルニア州はワインの生産地のメッカ。特にカリフォルニア州は2014年、年間31億6259万リットルものワインを生産し、全米のワイン生産量の約85%に相当します(!)。これは世界各国のワイン生産量と比べてもイタリア、フランス、スペインに次いで4位というからビックリ。カリフォルニアがこれほどワイン大国ならぬ大州(?)になったのはなぜか?その歴史を紐解いてみたいと思います。
カリフォルニアで本格的にワイン造りが始まったのは、1769年まで遡ります。フランシスコ会の宣教師、フニペロ・セラがメキシコより開拓者を従えてサンディエゴにやってきたのです。セラ宣教師はそこにミッション(布教本部)を創立し、さらにカリフォルニアにおける最初のワイン畑を開きました。ワインを作る目的はキリスト教の儀式に使うためと、ミッション内での食事などで飲まれるためでしたが、とにかくここで作られたワインが、カリフォルニアにおける最初のワインとなったのです。セラ宣教師はそれから布教のため北上していき、サンフランシスコの北にあるソノマまでたどり着きます。その間に建てたミッションは21にもおよび、各地でワイン造りを広めました。
カリフォルニアで商業用ワイン造りが始まったのは、1830年頃。フランスのボルドーから移住してきたジャン・ルイ・ヴィーニュが、フランスより本場のブドウの苗を持ってきて、現在のダウンタウン・ロサンゼルスにブドウ畑を開いたのです。さらに1848年、北カリフォルニアで金鉱が見つかると、いわゆるゴールドラッシュの時代に突入し、フランスやイタリア、ドイツ、イギリスなどから移民が押し寄せました。その中でワイン造りに精通していた人たちがワイン畑を開き、本格的なワインをカリフォルニアの地で広め出したのです。
このようにして、カリフォルニアにはキリスト教の布教、そしてゴールドラッシュをきっかけとしたヨーロッパからの移民と、大きく2つの理由からワイン造りが伝わり、栄えていったのです。
カリフォルニアでのワイン造りはどんどん盛んになっていきましたが、そこに急ブレーキがかかったのが、1919年に施行され、1933年まで続いた禁酒法の時代。キリスト教の儀式用および医療用として例外に認められた所以外、ほとんどのワイナリーおよびワイン農場が閉鎖に追い込まれてしまいました。1929年に起こった大恐慌もダメ押しでした。その後も第2次世界大戦が起こるなど、ワイン業界はなかなか禁酒法時代以前の生産規模に戻ることができませんでしたが、1960年代、その勢いを取り戻しました。
一時ブレーキはかかったものの、18世紀からワイン造りを続けてきた実績は1976年、実を結びます。同年にパリで行われたブラインドテイスティングの大会で、フランスの有名なワインを押しのけ、赤ワイン、白ワインと両方の分野で賞を取るまでに至り、世界のワイン業界を震撼させたのです。
それからカリフォルニア州でのワイン生産量は増え続け、ワイン畑は1960年には10万エーカー(4万500ヘクタール)だったのが現在は53万5000エーカー(21万6700ヘクタール)以上に、ワイナリーの数も1966年には227だったのが2010年には3400にもなっています。ちなみに、ヘクタールと言われても分かりづらいかもですが、米作国家である日本の田んぼの総面積が246万5000ヘクタールなので、その10分の1程度と言えば少しピンと来るでしょうか。
オーガニックワインが増えているのも
カリフォルニアならでは
では、昨今のカリフォルニアワインの特徴ってどんなものなのでしょうか?まず、現在のカリフォルニアワインの産地は、以下に分けられます。
●サンフランシスコの北、ナパやソノマを擁する高級ワインの産地「Northern Coast(ノーザン・コースト)」
●サンフランシスコからサンタバーバラまでの海岸地域とその少し内陸地域を指す「Central Coast(セントラル・コースト)」
●カリフォルニアの広く内陸を指し、テーブルワインや大量生産用のバルクワインが作られる同州最大のワイン生産地「Central Valley(セントラル・ヴァレー)」
●カリフォルニアワインの歴史において最初の地であるロサンゼルス、サンディエゴ周辺の「Southern California(サザン・カリフォルニア)」
●ヨセミテ国立公園を擁するシエラネバダ山脈周辺の「Sierra Nevada(シエラ・ネバダ)」
南北に長く伸び、かつ海岸沿い、内陸、山谷があり、1つの州なのに日本よりも広い面積を持つカリフォルニアは、各地で気候や地質が全く違います。さらにそこで100を超えるブドウ品種が栽培されているわけですから、本当にさまざまな種類のワインが存在します。ただ、近年のトレンドとして、単一のブドウ品種で作る「Varietal Wine(ヴァリエタルワイン。簡単に言うと高級ワイン!)」の生産、消費が増加しており、「安いワインを大量生産するカリフォルニア」ではなく、「リーズナブルかつ、高品質のワインを生産するカリフォルニア」に変貌を遂げてきています。
また、カリフォルニアのワイナリーおよびぶどう栽培農家は「Sustainable Winegrowing Program」と呼ばれるサステイナブルなワイン造りをするためのガイドラインを設けています。これには、羊や鳥を雑草や害虫の駆除に使うことや、灌漑による水の使用の抑制、廃棄物の抑制についてなど、さまざまなことが記載されています。オーガニック農法もこのガイドラインには含まれており、オーガニック農法でぶどうを育てるぶどう畑も増えてきています(さすがカリフォルニア!)。そんなぶどうを使ったオーガニックワインも徐々に増えてきており、ワイン屋や「Whole Foods」や「Trader Joe’s」に行けば必ずオーガニックワインが何種類か見つかります。日本でもカリフォルニアのオーガニックワインは手に入りますので、ぜひ一度試してみては?
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