ロサンゼルスの大きな特徴の一つに「ハリウッド＝映画」が挙げられます。巨大な映画スタジオがたくさんあるし、映画ロケ地もそこら中にある。ハリウッド俳優を見かけた、なんて話もたまに聞きます（移住前に期待していた程は聞かない。そう簡単には出くわさない...w）。
私がLAに住んでいて「あぁ、映画の街なんだなぁ」と感じるのは映画祭の多さで、毎月のように映画祭があります。アカデミー賞のような世界的な映画祭もあれば、日本映画だけの映画祭もある。そこで今回は、ロサンゼルスならではの映画祭の楽しみ方をご紹介します。
映画祭の年間スケジュール
まずはロサンゼルスおよび近郊都市で行われる主な映画祭のスケジュールから。
Palm Springs International Film Festival（1月）
ロサンゼルスから車で2時間ほど内陸のパームスプリングスで毎年、年初に行われる映画祭。往年のハリウッド関係者の避寒地（別荘地）としても有名な場所で、かなり有名な俳優陣もガラに登場する。2020年にはシャーリーズ・セロン、ジェニファー・ロペス、サルマ・ハエック、アダム・ドライバー、アントニオ・バンデラス、ジェイミー・フォックスなど。
期間中、周辺の映画館で様々な作品が上映され、一般人も鑑賞が可能。
直近の開催：January 4-15 2024（第35回）
公式サイト：Palm Springs International Film Festival
Screen Actors Guild Awards（1月）
Screen Actors Guild（映画俳優組合、通称SAG）による映画とテレビを対象としたアワードで1995年から開催されている。組合会員がアカデミー会員との重複が多いため、アカデミー賞の前哨戦とも言われる。賞の模様は2024年からNetflixで配信。
直近の開催：February 24, 2024（第30回）
公式サイト：Screen Actors Guild Awards
ゴールデン・グローブ賞 / Golden Globe Awards（1月）
ロサンゼルスで行われる映画とテレビドラマの賞。ハリウッド外国人映画記者協会の会員（2021年2月時点で87名）の投票により各賞の最優秀賞が決められる。授賞式の様子はNBCにて全米にテレビ中継される。
直近の開催：January 7, 2024（第81回）
公式サイト：Golden Globe Awards
アカデミー賞 / Academy Awards / The Oscars（2-3月）
映画芸術科学アカデミー（Academy of Motion Picture Arts and Sciences）による映画賞で、最優秀賞に贈られるオスカー像から「The Oscars」とも呼ばれている。ロサンゼルスのハリウッドにあるドルビー・シアターで開催され、会場まで敷かれるレッドカーペットを映画関係者が入場するシーンも含めて全米にABCにてテレビ中継される。
直近の開催：March 10, 2024（第96回）
公式サイト：The Oscars
Santa Barbara International Film Festival（3月）
直近の開催：March 7-17, 2024（第39回）
公式サイト：Santa Barbara International Film Festival
San Francisco International Film Festival（4月）
国際的な映画祭の一つ。200本以上の作品が、50を超える国から出品される。
直近の開催：Apr 24-28, 2024（第67回）
公式サイト：San Francisco International Film Festival（SFIFF）
Los Angeles Asian Pacific Film Festival（5月）
アジアや太平洋の国々で製作された作品の映画祭。
直近の開催：May 4-13, 2023（第39回）
公式サイト：Los Angeles Asian Pacific Film Festival
Japanese Film Festival Online 2024（6-7月）
Japan Foundation（国際交流基金）主催による映画祭。最新映画ではなく、2010年代の話題作から小津安二郎作品など名作まで幅広いライナップが、オンラインで無料で視聴ができる。
前回開催：Jun 5‐19, 2024（映画作品）、Jun 19- Jul 3, 2024（TVドラマ作品）
公式サイト：Japanese Film Festival
Outfest Los Angeles LGBTQ+ Film Festival（7月）
”LGBTQIA+の多様なストーリーを可視化し、ストーリーテラーに力を与えることで、共感を得て、意味のある社会的変化をもたらすこと”を目的とするOutfestによる映画祭。
直近の開催：July 13-23, 2023
公式サイト：Outfest Los Angeles LGBTQ+ Film Festival
ロサンゼルス短編映画際 / LA Shorts International Film Festival（7月）
世界で最も権威があり、最も大規模な国際短編映画祭の一つで、映画芸術科学アカデミー（OSCAR）や英国映画テレビ芸術アカデミー（BAFTA）など様々なアカデミーから認定されている映画祭。
次回の開催：July 17-28, 2024
公式サイト：https://www.lashortsfest.com/
ロサンゼルス日本映画祭 / Japan Film Festival Los Angeles（10月）
長編、短編、ドキュメンタリーなどを含む約30本の日本映画を上映。当日は監督やキャストが登壇してのQ&Qセッションなども行われる。なお作品はオンラインでの有料配信もある。
直近の開催：September 1-15, 2024（第19回）
公式サイト：Japan Film Festival Los Angeles
Animation is Film Festival（10月）
2017年からスタートしたアニメーション作品に特化した映画祭で、アヌシー国際アニメーション映画祭がパートナーとして参画している。
「アニメと言えば日本！」ではあるが、日本以外の多くの国々からも出品される。近年では2019年のプレミア作品として細田守監督の『未来のミライ』が上映され、細田監督も登壇。上映後のインタビュー、Q&Aを行っている。
2021年には西野亮廣さんが監督総指揮・原作・脚本を務めた『エントツ町のプペル』が出品され、北米プレミア上映としても注目された。当日は上映後にZoomによる西野さん、廣田監督へのインタビュー、Q&Aが行われた。英語吹き替え版の世界初上映ということもあり、吹き替えを担当した声優・俳優（アメリカでも吹き替えを俳優が行う場合が多い）が会場で一般客と共に鑑賞。
2023年のオープニング作品は宮崎駿監督の『The Boy and the Heron（君たちはどう生きるか）』。但しチケットは発売と同時に完売。さすがです。
直近開催：October 18 – 22, 2023
公式サイト：Animation is Film Festival
Newport Beach Film Festival（10月）
ロサンゼルス近郊のニューポートビーチで開催される映画祭。
直近の開催：October 12‐19, 2023（第24回）
公式サイト：Newport Beach Film Festival
OC Film Fiesta（10月）
ロサンゼルス近郊のオレンジカウンティで開催される映画祭。
直近の開催：October 12‐29, 2023（第14回）
公式サイト：OC Film Fiesta
AFI Fest（10‐11月）
ロサンゼルス市内で開催される映画祭のうち、一般人も鑑賞できる最も規模が大きい映画祭。ハリウッド映画の聖地とも言えるチャイニーズシアターを中心に開催され、ガラにはレッドカーペットが敷かれ、有名俳優たちが出席する。
日本映画も毎年1−3本ほど出品される。2023年には濱口竜介さん監督の『EVIL DOES NOT EXIST (悪は存在しない)』、ヴィム・ヴェンダース監督＆役所広司さん主演の『PERFECT DAYS』、坂本龍一さんのドキュメンタリーで坂本さんの息子、空音央さんが監督の『RYUICHI SAKAMOTO | OPUS』の上映が決まっている。
次回開催：October 25-29, 2023
公式サイト：AFI Fest
https://www.west-coaster.com/afi-fest/
映画祭の楽しみ方
アカデミー賞作品賞ノミネート作品は事前コンプリート！
鑑賞済みの映画が多ければ多いほど、授賞式を楽しめる。まずは作品賞のノミネート作品（10作品）を制覇を目指しましょう。大手映画館のAMCでは、アカデミー賞直前に「Best Picture Nominees」と称して、土日の2日間でノミネート作品をコンプリートできるチケットを販売している。
古いジブリ映画も映画館で！
ロサンゼルスで生活していると（LAに限らず海外で生活していると）日本映画に飢えてくる…。でもロサンゼルスなら他都市に比べ断然日本映画に触れる機会が多い。映画館のスクリーンで、ローカルの人々と肩を並べながら日本映画を観る機会はとっても貴重＆楽しい。
因みに、昔のジブリ作品を映画館で観られるのもアメリカならでは。毎年行われている「Studio Ghibli Fest」ではジブリの人気作品をAMCなどの映画館で上映。
『カリオストロの城』が上映された年も。
そのときは特典映像として原作者であるモンキー・パンチ先生のビデオレター付きでした。
貴重すぎる...
2024年のStudio Ghibli Festの上映作品
『千と千尋の神隠し（Spirited Away）』4/27-5/1
『風の谷のナウシカ（Nausicaa）』5/19・5/21
『天空の城ラピュタ（Castle in the sky）』5/20・5/22
『借りぐらしのアリエッティ（The Secret World of Arrietty）』6/9・6/11
『思い出のマーニー（When Marnie was there）』6/10・6/12
『もののけ姫（Princess Mononoke）』7/13-7/17
『崖の上のポニョ（Ponyo）』8/3-8/7
『耳をすませば（Whisper of the Heart）』8/25・8/27
『猫の恩返し（The Cat Returns）』8/26・8/28
『ハウルの動く城（Howl's Moving Castle）』9/26-10/3
『魔女の宅急便（Kiki's Delivery Service）』10/26-10/30
『平成狸合戦ぽんぽこ（Pom Poko）』11/24・11/26
『かぐや姫（The tale of the Princess Kagura）』11/25・11/27
『となりのトトロ（My Neighbor Totoro）』12/7-12/11
『君たちはどう生きるか』がアカデミー賞長編アニメを受賞したので、今年のGkids（配給会社）は大張り切り！例年の倍近い作品の上映です。いや〜楽しみ♪
そんな『君たちはどう生きるか』は特典映像を追加した上映が3月22日からスタート。
北米（アメリカ合衆国とカナダ）の映画館で鑑賞可能で、AMCでも上映されます。
プレミア上映、レッドカーペットあり
アカデミー賞やゴールデン・グローブ賞はさすがに難しいが、AFIあたりになるとプレミア上映に参加できたり、レッドカーペットを見るチャンスも。「あぁ、ここはハリウッドなんだなぁ」と最も実感する瞬間。
監督やキャストの対談、Q&Aセッションあり
特に日本映画の場合、監督やキャストがわざわざ日本から訪れることもあり、撮影の裏話が聞けたり、来場者の質問に答えてくれるという嬉しいおまけイベントあり。「DVD/ブルーレイの本編よりもメイキングが好き！」という人は特に楽しめる。
MAYのおすすめ映画祭
Animation is Film Festival
2017年スタートながら、既にその地位を確立しつつある映画祭。過去には、日本からは新海誠監督、細田守監督、西野亮廣さんがアフタートークに登場している。
AFI Fest
日本の映画が1-2本出品され、監督やキャストが登場することも。過去には『そして父になる』で是枝監督が、『あん』（河瀬直美監督）では樹木希林さんが来米している。
アカデミー賞
数日前から会場周辺で交通規制が入る。レッドカーペットを見るために何ブロックも歩いて会場に近づいた友人曰く「全然遠くて見れない」そうw。午後からレッドカーペットのテレビ中継が始まり、16時から授賞式が始まるので、「あぁ、あそこで今行われているんだなぁ」と思いを馳せながらリアルタイムで見るのがおすすめ。
もっとある！LAならではの映画の楽しみ方
LA有名大学での映画上映イベント
USC、UCLAなどの有名校には映画学部が存在する。いずれの大学でも日本文化や日本映画に関する関心は高く、例えば2017年には「Hirokazu Kore-eda: Cinema from the Outside in」（柳井イニシアティブとUCLA映画＆テレビ学部の主催）が行われ、UCS・UCLAの両キャンパスで是枝作品が上映され、是枝監督も来米している。
USCキャンパス内のシアターでは定期的に映画上映イベント、USC Cinematic Artsを開催しており、一般人でも鑑賞可能なものも多い。わたしは過去に『かもめ食堂』や『誰も知らない』をUSCの学生に混じって鑑賞したことがあり、とっても新鮮でした。特に前述の是枝作品イベントでの『誰も知らない』上映後には是枝監督が登壇し、司会を務めた同学部のアメリカ人教授の日本語の堪能さ＆是枝作品の造詣の深さに驚愕。また映画学部の学生たちからのマニアックな質問も印象的。
UCLAでは早稲田大学と連携した「柳井イニシアティブ」という日本文化の研究およびそのグローバル化に取り組むプロジェクトが2014年にスタート。名前からもわかる通り（株）ファーストリテイリング代表の柳井正さんが多額の寄付を行っている。
公開前のモニター制度
Searchlight Screeningなどが行っている、一般公開前の上映会。「どのような人が、どんな感想を持ったのか」を調査するために行われ、作品によって招集するオーディエンスの属性が異なる。一般公開前のため参加条件が厳しく、Agreementにサインしたり、会場内へのスマホ持ち込みを禁止される場合も。
いかがでしたか？
海外で暮らしていると日本映画が恋しくなるのですが、ロサンゼルスではまた違った角度から日本映画を楽しむことができるのも事実。
映画祭にももっと気軽に足を運んでみてください。
では〜。
