近年、「ファーム・トゥー・テーブル」という言葉をよく聞くようになりました。「ローカルの農家で採れた食材を、新鮮な状態をキープしつつ、テーブルに届ける」という考え方で、地産地消(地元で採れたものを地元で消費する)を実践する方法の一つです。例えば、サンフランシスコやポートランドをはじめとする、素材や地産地消ににこだわる文化が根づいた地域のレストランは農家から直接野菜を仕入れることに熱心。また、そういった都市では毎日のようにあちこちでファーマーズマーケットが開かれ、レストランだけでなく一般市民も生産者と会話をしながら食材を買うことができます。
これも一つのファーム・トゥー・テーブル!!!
もちろん、私が住むロサンゼルスでもこの考え方が浸透していて、毎日のようにファーマーズマーケットが開かれていたり、スーパーでは「ローカルで採れましたコーナー」が設けられていたり。そして最近では、「農家が直接、野菜を配達してくれる」というサービスも出てきました。
私が利用しているのは「Farm Fresh To You」というもので、Capay Organicという農家が運営しています。1976年にサンフランシスコで農場をスタートさせ、有機栽培という考えが始まったばかりの頃からオーガニックな野菜や果物を作り続けている農家です。1992年に、農家と消費者とを直接つなぐ目的で「Farm Fresh To You」をスタート。以来、季節の野菜・果物をBOXに入れ、家庭やオフィスに配達をしているのですが、現在はロサンゼルスにも農場を持ち、同サービスを展開しているのです。配送業者に任せず、彼ら自身が配達を行っているのが特徴です。
Farm Fresh To Youはこんな感じ
最も定番の使い方は定期配達。
・BOXの大きさ
・中身(野菜だけ or 果物だけ or 野菜と果物)
・頻度(毎週、隔週、3週に1回、4週に1回)
…を指定しておくと、自動的に家に届きます。例えば私が注文している「スモール x 野菜と果物 x 4週に1回」は26ドル。
エリアによって配達曜日が決められていて、例えば「水曜日」のエリアの場合、前日火曜日の夜〜水曜日の朝にかけて配達が行われ、水曜日朝に玄関を開けるとBOXが置かれています。野菜・果物が日光や暑さで傷まないようにとの配慮から深夜に配達しているのです。もちろんこのBOXは再利用されていて、畳んで外に置いておくと、回収されていきます。
中身は季節によって異なり、例えば今の時期(3月)だと
・ジャガイモ / Yellow Finn Potatoes(1パウンド ※約450g)
・りんご / Fuji Apple(3個)
・エシャロット / Shallots(1.25パウンド ※約560g)
・ビーツ / Beets(1束)
・ブロッコリー / Broccoli(1房)
・レタス / Lettuce(1玉)
・アボカド / Hass Avocado(2個)
・キウイ / Kiwis(2個)
が入っています。
配達日の2日前までなら中身のカスタマイズが可能です。嫌いなものをやめて好きなものを追加したり、+αで卵を入れてもらったり。納品書と共に『Farm News』(農場便り)が同封されていて、裏面にはレシピが。今回は「キウイのレモネード」と「レストランのサラダよりもイケてるサラダ」の作り方が載っていました。こういうちょっとした気遣いにもほんわかしちゃいます。
(後日、Fresh Farm To Youの人たちに会う機会がありました。現在、月のオーダーは約5000件で、配送からBOXの回収まで、全部彼らがやっているそう!)
そうそう、日本から遊びに来た友達と食事をしていると、「アメリカはサラダがおいしい」と言われることがあります。確かに、こちらのサラダのバリエーションは多い!!!葉野菜も根野菜も、フルーツもナッツもチーズも使う。「メインディッシュになるレベルのサラダ」まであります(実際に、メインにサラダを選ぶ人もいる)。West Coasterでも、そのうち「レストランのサラダよりイケてるサラダ」を紹介していきたいと思います。
地元貢献という考え方
私はこのサービスを「地元のオーガニック農家を応援する」という目的で、月1回の頻度で利用しています。ロサンゼルスにはオーガニック野菜・果物を取り揃えているスーパーがたくさんあり、おそらく同じ量を買っても26ドルはかからないでしょう。でも、地元産業への経済的貢献と同時に、季節ごとに旬の野菜や果物を味わったり(スーパーだと、1年中買えるものが多く、どれが旬なのか分かりづらい)、自分ではなかなか手を出さない食材を試すきっかけになると思い、利用しています。お陰で、ビーツのナムルに挑戦したり、コールドプレスジュースに入れて飲んでみたりできました(ビーツなんて、自分では絶対手に取らない野菜でした)。そしてビーツのナムル、なかなかイケます。
日本のファーム・トゥー・テーブルは?
日本の類似サービスでまず思い浮かぶのが、「らでぃっしゅぼーや」や「オイシックス」ではないでしょうか。しかしこれらは、全国各地の食材を販売・配送しています。できるだけ生産者の顔が見えるようにしてはいるものの、「ローカルの農家で採れた…」というファーム・トゥー・テーブルという考え方とは異なるサービスです。
それよりは昔からある、JA(農協)や農家が行う「野菜直売所」、最近都心でも増えてきているファーマーズマーケット(マルシェ)などが、ファーム・トゥー・テーブルと言えるでしょう。
・ JAファーマーズマーケット(直売所) 全国1700箇所
・ Farmer's Market @ UNU 青山・国際連合大学前広場 毎週土日
・ ヒルズマルシェ 赤坂アークヒルズ 毎週土
・ 代官山マルシェ 代官山シアターサイバード 月1回
・ 東京朝市アースデイマーケット 代々木公園けやき並木 月1回
4つ目の「代官山マルシェ」は、「My Farmer」という農家から野菜を直送するサービスを行っている会社が運営しているファーマーズマーケット。このMy Farmerに参画している農家が、消費者と直接会話をしながら採れたての野菜を販売できる場として開催されています。
たまには、生産者と会話をして、とっておきの調理方法や保存方法なども教えてもらいながら、食材を買ってみてはいかがでしょうか?
◉参考: