自転車フレンドリーな街がひしめく西海岸
広大なアメリカでは、日本のように誰もが自転車を移動手段として使っているわけではありません。しかしこの10数年、エコや健康の観点から、市などの自治体が自転車での移動を推奨し、インフラを整えるというケースが増えてきています。西海岸にはそんな自転車フレンドリーな街がたくさんあります。
シアトルに本社を構える『Walk Score』というWebサイトがあるのですが、このサイトでは「Walkability」という「いかに人々がその街を歩きたいか=住みやすい街か」という独自の指数を算出し、アメリカ全土でのランキングを発表しています。そんな同サイトでは「Bike Friendly Cities=自転車に優しい街」のランキングも発表しているのですが、2015年のランキングを見ると、西海岸の都市の多いこと!20位まで見てみると、2位にサンフランシスコ、5位にポートランド、9位にアーバイン、11位にサクラメント、14位にロングビーチ、17位にシアトルがランクインしています。ロサンゼルスは36位です。
この順位は「Bike Score」という独自の指数で付けられているのですが、評価基準として「自転車専用レーンがどれだけあるか」「自転車用のトレイルがどれだけあるか」「丘がどれだけあるか」「自転車での交通の便がどれだけいいか」「自転車で移動する人がどれだけいるか」などがあり、これらの総合ポイントでスコアが決まります。最後の「自転車で移動する人がどれだけいるか」がちょっとユニーク。アメリカでは日本ほど自転車で移動する人たちが多くないため、アメリカのドライバーは日本のドライバーほど自転車に気を付けることに慣れていません。ですから、自転車で移動する人が多ければ多いほど、自転車に注意を払うドライバーも増えるということで、より自転車に乗る人にとっては安全な街と言えるわけです。
全通勤者の7%が自転車(!)の
ポートランド
「Bike Score」で上位に来ている街では自転車専用レーンが広範囲に整備されていることはもちろんなのですが、ただ自転車レーンが多ければいいというわけでもなさそうです。例えば、サンフランシスコでは2007年から2010年の間、新たに自転車レーンを整備することを法律で禁止しました。なぜなら、交通量の多い大通りの自転車レーンを走るよりも、自転車レーンはなくても住宅街の道を走った方が安全面で良い場合があると判断したからです。これはほんの一例ですが、自転車フレンドリーな街では「何が本当に自転車フレンドリーか」がさまざまな観点から考えられているのです。
2013年には「Bike Score」ランキングで全米1位だった西海岸随一の自転車フレンドリーな街、ポートランド。同市ではナント、2014年、全通勤者のうち7%が自転車通勤車だったとか。これを支えるのが、ポートランド市のさまざまな取り組み。街中に自転車専用レーンが整備されているのはもちろん、自転車用のマップの無料配布、毎週木曜にシティーホールで行われる自転車に関して授業が受けられるランチ会や定期的に行われる勉強会、シェアバイク(600台、30ステーション)、街のあちこちに置かれる自転車を格納できるロッカー(16ドル/月)や自転車置場、ユニークな形をした自転車ラックの設置などなど…住んでいる人たちを「自転車に乗りたい!」と思わせるさまざまな施策が打たれているのです。
日本の自転車の普及率は世界でも有数でアメリカを大きく上回りますが、このようにサステナビリティー、エコ、健康などの観点から都市が自転車に乗ることを強く推進するという面では西海岸の都市が上回っていると言えます。みなさんもぜひ、これらの都市を一度訪れてみて、日本とはまた違った快適な自転車ライフを体感してみてください。
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