ローフードの原点はナント、
古代ギリシャ時代に遡る!?
アメリカ、そして西海岸のローフードの歴史を追うには、まず古代ギリシャ時代まで遡る必要があります。「ピタゴラスの定理」で知られる古代ギリシャの数学・哲学者ピタゴラスは、自身の哲学と宗教を学ぶ学校においてベジタリアンになる重要性を説いていました。また、この学校の生徒の一人で、「薬の父」または「ヒポクラテスの誓い」(ギリシャの神に対する、医者の倫理や任務に関する宣誓文))で知られるヒポクラテスは「食べ物を薬にしなさい」と言ったことで知られています。ピタゴラスらが食べていたのは火を通さない果物や野菜、ハチミツなどだけだったそうで、歴史上では彼らが最初の「ロービーガン」だと考えられています。
近代でローフードが世の中に知られるようになったのはまず、1930年。スイスのポール・コウチャコフ博士が「加熱した食べ物は“消化性白血球増加症(※1)”を引き起こすが、生のものを食べている限りはこの症状は起こらない」という研究を学会で発表したことがきっかけ。次に1966年、イランで出版された『Raw Eating(生食)』(A. ホバネシアン)も世界にローフードの考えが広まるきっかけに。この本は彼が病気に苦しむ自分の子どもをローフードのみを食べさせる食生活にすることで回復させた経験について書かれた本でした。
アメリカでは1966年、ビクトラス・コルベンスカスとアン・ウィグモアが、ローフードが病気の回復に効果的だということを発見。彼らはウィートグラス(※2)ジュースをはじめとするローフードで、不治の病に苦しむ人達を救うようになりました。彼らはその後、「ヒポクラテス・ヘルス・インスティテュート」というリビングフードの学校をフロリダ州に設立。ここは現在もローフード、さらにリビングフードを学ぶ最高レベルの教育機関として知られています。
※1:白血球が食べ物を体に害のある「異物」とみなして増加し、腸管に集まって攻撃する症状
※2:小麦の若葉で、血液の浄化作用やデトックス効果、細胞や免疫力の活性効果などが非常に高い。ミランダ・カーなどのセレブも愛用…!
LAのカリスマシェフ、ジュリアーノが
ローフードをトレンディーに
ビクトラス・コルベンスカスは『Survival into the 21st Century(21世紀への生存)』という西洋では最初のローフードの本を出版。これにより、アメリカでは徐々にローフードの考えが浸透していきました。さらにレスリー・ケントンによるローフードに関する書籍、『The New Raw Energy』(1984年)も多くの人に読まれ、ローフードの普及に一役買いました。ただ、問題だったのはこれらローフードのレシピはとても簡素なもので、サラダかスプラウティングした種や豆、あとはウィートグラスジュースくらいのものであったこと。要するに「地味」でインパクトがなかったのです。そのせいで、ローフードは一部の健康マニアには受け入れられたものの、なかなかブームとまではなりませんでした。
そんななか、ローフードを一気にメインストリームに押し上げた一つのきっかけが、カリスマ・ローフードシェフ、ジュリアーノ・ブロットマンがロサンゼルスで開いたレストラン「RAW」。ジュリアーノは、それまで味気なかったローフードのレシピを華やかで見た目も味も素晴らしいものに一変させたのです。これに食いついたのがハリウッドのセレブたちで、ローフードはトレンディーかつヘルシーな食習慣として世の中に認知されるようになっていったのです。ちなみに同店のファンであるセレブには枚挙の暇がなく、ナタリー・ポートマンやレオナルド・ディカプリオ、ジム・キャリー、さらに故スティーブ・ジョブズもよく足を運んだそうです。
彼がローフードをおいしく華やかに食べる可能性を世に示してからは、多くのシェフがこぞってローフードに挑戦し、それぞれが独自の味付けをしていくことでローフードは西海岸で広まっていき現在に至る…というのが簡単ではありますが「西海岸でローフードが普及している理由」になります。
◉引用元: